会葬いただいた方へ

10月10日が父の命日となりました。56歳でした。
この一週間はあっという間であり、また長い長い時間でした。
多くの方々に送り出していただけた父は幸せだったと思います。家族は、ゆっくりとですが、本当にゆっくりとですが、着実に今までと違う新しい日常に向かっています。
告別式で、自分が遺族代表の挨拶をすることがあるなんて、夢にも思っていませんでした。
通夜にお越しいただいた方には、伝えられなかったので記します。

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遺族を代表し、一言ご挨拶を申し上げます。
本日は、ご多忙のところ父義彦の為に遠路ご会葬いただき、厚く御礼を申し上げます。
生前もそして本日も皆様をはじめ、多くの方に囲まれて父は本当に幸せだったと思います。

父は、とても厳しくて、怖くて、そして、とても優しい親でした。
また、寡黙でもありました。
私が父親に遊んでもらいたい年頃の時に、父が四畳半の部屋にこもっていたことがあります。
普段は休みの日に色々なところに連れて行ってくれていました。
その日も遊んでもらいたい一心で、襖を開けました。

すると、父が建築の製図用の机の前で、勉強していた光景がありました。
すぐ母に、「今日は邪魔をしては駄目だよ。」といわれ、一瞬で襖を閉められました。
今思うと、建築士の国家試験の勉強をしていたのでしょう。

父は私たち子供に「勉強せんか」と言ったことが一度もありません。
その代わりに、
「自分が成りたい仕事をいつでもできるように準備はしておいた方が良い。選択肢を増やせよ。」
とたまに、言っていました。
私は本当にサッカーばかりしていましたが、節目では父の言葉をふと、思い出しました。
文字通り、背中で語ってくれていた父でした。

また、父の癌が発覚してからは、闘病が始まったときから息を引き取るまで
文句も言わず、弱音を吐くこともなく、無理にでも笑顔でいようとしてくれました。
不安もあったろうに、痛かっただろうに、本当に、強かったです。

最近、父に心配なことは無いか聞くと、「何も心配していない。」の一言でした。
誰もが、心配事が無いはずは、ないと思います。
でも、残される者の事を思い、そう、言ってのけました。
心の大きさを、懐の広さを改めて感じました。
そして私は、父に安心してもらえるようにしようと決めました。

このような父に対して、生前寄せられた皆様のご厚情に対し、心より御礼申し上げます。
私どもは未熟ではありますが、故人の教えを守り精進していく所存です。
皆様方には、故人と同様お付き合いをいただき、ご指導いただけますことをお願い申し上げます。

本日は、まことにありがとうございました。

 長男 邦彦
2011年10月12日

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