ブラジルW杯の代表メンバー発表を通して、勇ましさについて思うこと。

 「よかった。選ばれている。」メンバーリストを見て最初に思った率直な気持ちです。大迫が名を連ねていたから。そう思うには理由がは、これまでの一連のプロセスにあります。

 2012年の夏、日本がロンドン五輪でベスト4の実績を残した事はまだ記憶にあたらしいですが、そのチームの中心選手として目されていた大迫が選考から漏れた事も当然最近の事でした。それまでチームの中心として奮闘し、結果も残してきたのにまさかの落選。これで落胆しない人はいないと思います。それでも、その後の鹿島アントラーズでの活躍は周知の通りでした。心中は当人以外は知る由もありませんが、少なくともピッチで結果を出し続けた事は素晴らしいと思えました。

 その結果として掴んだ東アジアカップ(2013年7月)でのフル代表初選出。ザックの期待に応えるゴールも見事に決めました。その記憶がさめる間もない2013年11月、W杯へ向けた強化試合のベルギーでの国際親善試合のメンバーとしても当然のように召集されました。オランダ戦でもゴールを決める事で一気に代表のFWスタメン候補に名を連ねるまでになりました。その後も鹿島アントラーズで安定した結果を出し続けていました。代表のFWとして柿谷と並んで最も近い位置を確保したといえる状況でした。ブラジルW杯メンバー入りに頭一つ抜け出したと言えます。

 そんな最中、海外移籍の話がメディアを通しても具体的に耳にするようになりました。W杯イヤーに移籍をすることは、代表入りを目指す選手にとっては大きなリスクを伴います。ましてや所属クラブでも代表でも結果を出しているのであればコンディションのつくり方も含めて移籍しない判断をする選手が大多数です。しかも、大迫はついこの間、ロンドン五輪で「サプライズ落選」を身を持って経験しています。本人も海外移籍するか熟慮すると言っていたのはその辺りの事も踏まえてなのだろうと思いました。

 自ら選択肢をつくり、そして熟慮の結果、2014年1月にドイツへの移籍を決めて1860ミュンヘンの一員となりました。この決断はものすごく、ものすごく勇気のいる事だったと思います。W杯に出るだけではなく、そこでゴールを決める為にこれまでの環境ではなく、新しい環境に身を投じるという決断です。

 おそらくは、世界を相手にした時に自分が何を磨くべきかを見据えた上での判断だったのだろうと思います。そしてここでも結果を出して、2部とはいえ、ドイツのプロリーグでMVPとベストイレブンという快挙まで成し遂げました。そのままW杯メンバー予想の中では、必ずと言ってよいほど名を連ねていました。

 メンバー発表当日、大迫の選出が妥当だった感がありました。ここで妥当だと思わせたところに凄味を覚えます。前述のタイミングで海外移籍を決断してそこで、確実に結果を出して掴んだブラジルW杯の日の丸ユニフォーム。この勇気ある決断に心から拍手を送ります。本当にすごい。
 大逆転劇は、観衆を沸かせてくれます。一方で逆境に置かれる前にタイムテーブルをしっかりと作って一歩一歩着実に進める事は、派手さがありません。でもこの地味な事を着実にやってのけるのはプロフェッショナルだと思います。強い。本番でもぜひ結果を残して欲しいです。

 高校サッカー選手権の決勝の国立で魅せてくれたプレーでは鳥肌が立ちました。ブラジルではどんなプレーを、ゴールを魅せてくれるのか。心底楽しみです。

 大迫勇也選手。勇気が溢れる選択をしたその挑戦に、言葉では表せない励ましをもらっている人はきっと多いはず。私を含めて。

薩摩藩・島津家に伝わる(らしい)話しを思い起こします。
「薩摩の教え」-男の順序-
 1:何かに挑戦し、成功した者
 2:何かに挑戦し、失敗した者
 3:自ら挑戦しなかったが、挑戦した人の手助けをした者
 4:何もしなかった者
 5:何もせず、批判だけしている者
(注:以前Webで調べてみましたが出所がよくわかりませんでした。これは、人力検索の方が強そう。。)

挑戦とは、自ら選択肢をつくり決断し、実行することなのだろうと思います。
W杯シーズンに入るからか、刺激が強くて多すぎて眠れない日々が続きそうです。